グレーコリー症候群ってどんな病気?原因や症状、治療・予防法について

グレーコリー症候群ってどんな病気?原因や症状、治療・予防法について

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はじめに

グレーコリー症候群は、遺伝性の血液疾患です。
この病気は、体の免疫システムとして稼働している好中球が何らかの理由で著しく減ってしまうのが特徴です。
今回は、犬の周期性好中球減少症の原因と症状、好発犬種や治療法・予防法を解説します。

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【原因】グレーコリー症候群は造血機能の障害によって発症する

グレーコリー症候群は、正式名称を「周期性好中球減少症」といい、その名の通り「周期的に好中球の数が減少する病気」です。
血液中の好中球は定期的に増えたり減ったりを繰り返し、安定した数を保つことができません。
好中球が少ない状態の時に細菌やウイルスに感染した場合、免疫システムが稼働せず、症状は重症化します。

なお、犬の周期性好中球減少症は、造血機能障害によって好中球の数が異常に少なくなると発症します。
好中球は、血液中にある白血球の約45~75%を占めている細胞で、細菌やウイルスから体を守る働きがあります。
ところが周期性好中球減少症になると11~13日周期で造血抑制が起こり、好中球の数が激減してしまいます。

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【症状】発熱・結膜炎・下痢・関節炎・発育不全が現れる

犬の周期性好中球減少症では、主に発熱・結膜炎・下痢・関節炎・発育不全などがみられます。
ただし、好中球が減少しただけでは特に症状はみられず、細菌やウイルスに感染した結果、症状が現れます。
周期性好中球減少症を患っている犬では感染が頻繁に起こるため、慢性的な体調不良がみられるケースも多いでしょう。

また、周期性好中球減少症の犬は、通常より頭蓋骨の横幅が狭く、縦に細長い傾向があります。
発育不全によって骨密度が未成熟であるため骨折しやすく、骨の内部に炎症が起こって痛みを伴うことも。
内部に炎症が起きているとどこかにあたるだけで体が痛むため、常にくんくんと鳴き続けます。

なお、周期性好中球減少症は生後2~6ヵ月齢で発症することが多い病気です。
ただし、まれに症状が穏やかなケースもあり、その場合は2歳頃になるまで目立った症状は現れません。
いずれの場合も、周期性好中球減少症の犬が4歳を超えて生存することは難しいとされています。

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グレーコリー症候群になりやすい犬種は?

グレーコリー症候群になりやすい犬種は、以下の通りです。

グレーコリー症候群になりやすい犬種

ラフ・コリーやスムース・コリーは、遺伝的に周期性好中球減少症を発症しやすいといわれています。
グレーコリー症候群と呼ばれる通り、特に毛色がグレーあるいはシルバーのコリーは、周期性好中球減少症を発症しやすい傾向があります。

なお、グレーやシルバーは美しいカラーですが、先天的な病気を持ちやすい一面があります。
これらのカラーは「ブラックの毛色に元の色を希釈する遺伝子が偶然作用して生み出されるもの」です。
にもかかわらず、グレーやシルバーカラーの子犬が産まれやすいように、同じ遺伝子の犬同士で交配させるとどうなるでしょうか?
同じ遺伝子を掛け合わせて生まれた子犬は遺伝子の多様性が薄れ、劣性遺伝子の発現による疾患を持ちやすくなるのです。

どんなカラーであっても可愛い愛犬であることに変わりはありません。
しかし、先天性疾患という面でいえば、グレーやシルバーのコリーは他カラーよりもリスクが高いといえるでしょう。

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その他のコリー系犬種のグレーコリー症候群発症例

例えば「コリー眼異常(コリーアイ)」などの遺伝的疾患は、その他のコリー系犬種でも共有して発症しやすいという側面があります。
では同じ遺伝的疾患であるグレーコリー症候群はどうなのでしょうか?
代表的なコリー系犬種それぞれをみていきましょう。

シェルティー(シェットランド・シープドッグ)

シェルティーもコリーの近縁種であるため、グレーコリー症候群が理論的には発生する可能性があります。
しかし、実際の発症例や統計はほとんど報告されていません。そのため、シェルティーではこの疾患は非常に稀と考えられています。

ボーダー・コリー

ボーダーコリーはコリー系の犬種ですが、グレーコリー症候群の原因であるAP3B1遺伝子の変異は確認されていません。
他の遺伝性疾患(例:コリーアイ異常など)は共有する場合がありますが、グレーコリー症候群については発症が報告されていないため、心配はほとんどないとされています。

オーストラリアン・シェパード

オーストラリアンシェパードは「メラニン遺伝子(Merle gene)」の影響を強く受けやすい犬種です。これにより、毛色や視覚・聴覚の異常が起こる場合がありますが、グレーコリー症候群の発症例は確認されていません。
同じ「グレーっぽい毛色」を持つ犬でも、グレーコリー症候群ではなく、メラニン関連の影響による健康リスク(例:視覚・聴覚障害)が主な問題になる場合があります。

他のコリー系犬種に発症が見られない理由

グレーコリー症候群の原因であるAP3B1遺伝子の変異は、特定のコリー系統に限られていると考えられています。
このため、シェルティーやボーダーコリー、オーストラリアンシェパードのような近縁種であっても、疾患の発症リスクは非常に低いか、現状では報告されていません。

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【治療】基本的に治療は難しい

犬の周期性好中球減少症には、残念ながら明確な治療法がないのが現状です。
好中球の産生を促す薬を投与するケースもありますが、周期性好中球減少症への効果は芳しくありません。

周期性好中球減少症の犬が感染症にかかった場合、多くは短期間で命を落とします。
そのため、感染の原因や正確な部位が分かっていなくても、ひとまず強い抗菌薬などで対処するのが一般的です。
ただ、重症のケースで回復する見込みは非常に低いため、治療方針については獣医師と相談して決めることになるでしょう。

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【予防】周期性好中球減少症の明確な予防法はない

グレーコリー症候群は遺伝性疾患のため、予防法はありません。
ブリーダーやショップで犬を迎える際は、血縁に周期性好中球減少症を発症した犬がいないか確認しておくこと。
普段からよく様子をみておき、気になることがあれば早めに動物病院を受診しましょう。

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もしも愛犬がグレーコリー症候群になってしまったら

周期性好中球減少症には明確な治療法がなく、発症した犬は例外なく亡くなってしまいます
突然の宣告ですぐに受け入れることは難しいと思いますが、愛犬に残された時間はあとわずかです。
愛犬が少しでも安心できるよう、飼い主さんはできる限り傍にいてあげて、こまめに声をかけてあげましょう。

愛犬が亡くなった後で「あの時こうしてあげれば良かった」と後悔するのは、仕方のないことです。
それでも、愛犬に対して出来ることは全てやったと思うことができれば、多少なりとも後悔の気持ちは少なくなります。
愛犬に残された時間を少しでも有意義なものにできるよう、今できることはなにか考えてみてくださいね。

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周期性好中球減少症はまだ解明されていないことの方が多い病気

犬の周期性好中球減少症は非常に珍しい病気で、分かっていないことのほうが多いです。
根本的な治療法や有効な処置も見つかっておらず、発症した場合は最終的に亡くなってしまうことになります。
獣医療の発展によって、いつか周期性好中球減少症に有効な治療法が見つかることを願っています。