犬のアレルギー反応は、環境中の物質により引き起こされるアトピー性皮膚炎が昔から広く知られていましたが、近年では食べ物によってもアレルギー反応が引き起こされるということが判明しました。
「最近、食物アレルギーのあるわんちゃんが増えた」「昔は食物アレルギーの犬はほとんどいなかった」などと感じるのは、実際には食物アレルギーについて判明したのがごく最近のことだからです。
今回はそんな犬と食物アレルギーの関係について解説していきます。
犬のアレルギー反応は、環境中の物質により引き起こされるアトピー性皮膚炎が昔から広く知られていましたが、近年では食べ物によってもアレルギー反応が引き起こされるということが判明しました。
「最近、食物アレルギーのあるわんちゃんが増えた」「昔は食物アレルギーの犬はほとんどいなかった」などと感じるのは、実際には食物アレルギーについて判明したのがごく最近のことだからです。
今回はそんな犬と食物アレルギーの関係について解説していきます。
「アレルギー」という言葉は、1906年にオーストリアの小児科医であったクレメンス・ピーター・フォン・ピルケ(Clemens Peter von Pirquet)が「奇妙な反応」という意味で使ったのが始まりと言われています。
現代において「アレルギー」とは、動物の体内の「免疫」というシステムが、本来はウイルスや細菌などから体を守るように働くところを、ある特定のアレルゲン(アレルギーを引きおこす抗原物質)に対して過剰に反応してしまい、症状が引き起こされることをいいます。
犬のアレルギーの場合、その種類は大きく二つに分けられます。
一つは「環境によるアレルギー」で、アトピー性皮膚炎などがこれに当てはまります。
もう一つが「食事によるアレルギー」で、いわゆる食物アレルギーです。
次の項では、それぞれの原因について詳しく解説したいと思います。
前項の通り、犬のアレルギーは大きく「環境中のアレルギー(アトピー性皮膚炎)」と「食事中のアレルギー(食物アレルギー)」の二つに分けられます。
アトピー性皮膚炎は、環境中のアレルゲン(植物やハウスダストマイトなど)に、IgE抗体という抗体を介した「Ⅰ型アレルギー」による反応が起こることで発症します。
一方で、食物アレルギーは、特定の食べ物に対する過剰な免疫反応により、皮膚症状の他、嘔吐や下痢といった消化器症状を起こします。
犬の食物アレルギーの場合、I型アレルギーの他に「IV型アレルギー」が大きく関与しています。
即時型アレルギーとも呼ばれるI型アレルギーに対し、IV型アレルギーは「遅延型アレルギー」と呼ばれ、数時間〜数日をかけて症状が現れます。
リンパ球(T細胞)が関与し、細胞性免疫反応が遅れて起こることがその原因とされていますが、食物アレルギーによる慢性的な皮膚のかゆみや赤みの多くは、このIV型アレルギーに起因します。
「即時型アレルギー」や「アナフィラキシー型アレルギー」とも呼ばれ、体内にアレルゲンが侵入してから数分〜数時間以内に症状が現れるのが特徴。
「遅延型アレルギー」とも呼ばれ、アレルゲンに触れてから数時間〜数日後(多くは24~48時間)に症状が現れるアレルギー。リンパ球(T細胞)が関与し、細胞性免疫反応が遅れて起こる。
犬の食物アレルギーの原因は、フードやおやつに含まれる様々な原材料です。
特にアレルギーを起こしやすいのは「肉」と「炭水化物」と言われています。
以下の表で示すのが、代表的なアレルゲンとなります。
| 主要食物アレルゲンパネル | 除去食アレルゲンパネル |
| ・牛肉 ・豚肉 ・鶏肉 ・卵白 ・卵黄 ・牛乳 ・小麦 ・大豆 ・トウモロコシ |
・羊肉 ・馬肉 ・七面鳥 ・アヒル ・サケ ・タラ ・エンドウ豆 ・ジャガイモ ・米 |
犬の食物アレルギーの症状は、「皮膚症状」と「消化器症状」が中心となります。
皮膚に起こる症状は、かゆみや赤み、脱毛、苔癬化(たいせんか)、色素沈着などが主な例です。
中でも苔癬化と色素沈着は、長期にわたり発症している場合に出てくることが多い症状です。
上記に伴い、犬の食物アレルギーでは嘔吐や下痢、軟便などの消化器症状も多く認められています。
食物アレルギーの場合、発症する年齢は比較的若く、1歳を迎える前から症状が認められることがあります。
また、アトピー性皮膚炎の場合は、主に春から秋にかけて症状が強くなるという季節性の側面がありますが、食物アレルギーは季節を問わず、通年で症状が出ることが特徴的です。
食物アレルギーは、上記のように症状をはじめ、犬種、季節性、発症時期などから、その可能性をある程度推測することが可能です。
動物病院での受診をされる際には、そういった点を明確にした上で、獣医師に伝えると良いでしょう。
皮膚が慢性的な刺激(例えば、掻くこと)によって厚く硬くなり、表面が粗くなる状態を苔癬化といいます。
これは、皮膚が防御反応として角質を増やすために起こります。皮膚がかゆみを伴い、変色することがあります。
犬の食物アレルギーの診断は、「除去食試験」と「食物負荷試験」が診断のゴールドスタンダードと言われています。
まず、除去食試験としては、アレルゲンを除去したフードを8週間与えて、症状が改善するかを確認します。
次に、食物負荷試験として、再度アレルゲンの含まれたフードで症状が再燃するかを確認することで食物アレルギーを診断します。
しかし、これらの診断では犬にアレルギーがあること自体は分かっても、一体どの原材料にアレルギーが起きているか、原因の特定までは至らないことも多々あります。
そんな時は、より正確に原因物質を絞ることが出来るアレルギー検査を行うと良いでしょう。
現在、犬のアレルギー検査は多くの動物病院で「IgE検査(アレルゲン特異的IgE検査)」と「リンパ球反応検査」の2種類の検査方法が採用されており、どちらも血液検査で判定されます。
IgE検査では、犬の血液中に原因物質に対してどれぐらいのIgE抗体が存在しているかを測定します。
主にアトピー性皮膚炎のアレルゲンの特定に用いられており、このIgE抗体の量が多いほど、アレルギーの原因となっている可能性が高い物質と予測できます。
ただし、食物アレルギーの場合、ある物質に対してのIgE抗体量が多く、仮に陽性判定を受けたとしても必ずしもその物質に対してアレルギー症状を引き起こすというわけではありません。
逆に、アレルギーの原因として判断し、その物質を取り除いたとしても症状の改善がみられないケースも起こりえます。
その場合は、より食物アレルギーに対して有効な「リンパ球反応検査」の方を受けてみることをおすすめします。
なお、IgE検査はステロイド剤や免疫抑制剤などの、アレルギーに用いられる治療薬を飲んでいても検査結果に影響が出ないため、アレルギーの治療中でも実施が可能です。
IgE検査の費用目安としては、大体1.5〜2万円前後で受けられるでしょう。
また、IgEに関連したアレルギーは、生後6ヶ月を過ぎないと起きないとされていますので、この検査を検討する場合は、生後半年以上を過ぎてから行うと良いでしょう。
食物アレルギーの原因を調べる場合は、アレルギー検査のうち「リンパ球反応検査」を選びましょう。
リンパ球反応検査とは、血液中のリンパ球を培養し、特定のアレルゲンに対してどのくらいの反応が見られるかを測定する検査です。
採血にて回収したリンパ球と「抗原提示細胞」と呼ばれる細胞を、調べたいアレルゲンとともに培養します。
健康な犬(その物質に対してアレルギーがない犬)の場合、アレルゲンに反応するリンパ球が存在しないため、細胞から「これは異物だから対処しよう!」という指示が出ても、リンパ球は活性化しません。
対してその物質に対してアレルギーがある犬の場合は、指示を受けてリンパ球が活性化するため、過剰反応によるアレルギー症状が出てしまいます。
この検査を行い、どのアレルゲンに対しどれくらい多く活性化がみられたか測定することで、どの食物がアレルギーの原因になっているか推測することができます。
なお、この検査はステロイド剤や免疫抑制剤などの、アレルギーに用いられる治療薬を飲んでいる場合、検査結果に影響が出てしまいます。
そのため、リンパ球反応検査を行う場合は検査前に2週間ほどの休薬が推奨されます。
検査に明確な年齢基準はありませんが、離乳を終えていて、かつ気になる症状が出ていれば実施することが可能です。
リンパ球反応検査は、その検査の特性上ⅠgE検査に比べ、検査費用が高くなる傾向にあります。
費用目安としては大体2〜5万円程度で考えておくと良いでしょう。
現代では、日々様々なドッグフードや犬用おやつが発売されていて、選ぶのに迷ってしまいがちです。
わんちゃんによっては、体質的にフードやおやつが合わないこともよくあります。
もしかしたらその背景に、食物アレルギーが隠れているかもしれません。
もし、気になる症状がある場合は、フードやおやつの原材料を確認してみましょう。
場合によっては、アレルギー検査を行ったり、アレルギー用のフードやアレルギーになりにくいおやつを選んだりしてあげましょう。