ヤギ(ゴート)の肉は、その豊富な栄養素と低脂質な特徴が評価され、近年多くのドッグフードや犬用おやつに使われ始めています。
チキンやビーフなどの定番お肉に比べアレルギーにもなりにくく、肥満傾向のわんちゃんや脂肪分でお腹を壊しがちなわんちゃんにもオススメが出来、優秀な食材ともいえるヤギのお肉。
今回はそんなヤギ肉や、ヤギミルクを使用したフードやおやつについて解説します。
低アレルギーでヘルシー!犬におすすめのヤギ肉とヤギミルクの魅力を詳しく紹介
はじめに
低アレルギー・低脂質・高タンパクな「ヤギ肉」
ヤギ肉は低脂質なお肉として知られており、食品成分データベースの数値によると、その脂質はなんと牛肉の約1/7。
一方で、たんぱく質は牛肉よりも微量ながら多く、低脂質・高タンパクな食材であることが分かります。
また、脂質が少ないことから、100gあたりのエネルギー(カロリー)も牛肉に比べると半分程となっており、ヘルシーな食材と言えるでしょう。
| 成分(100gあたり) | ヤギ肉 | 牛肉(もも赤身) |
| エネルギー | 99kcal | 176kcal |
| たんぱく質 | 21.9g | 21.3g |
| 脂質 | 1.5g | 10.7g |
| 炭水化物 | 0.2g | 0.6g |
さらに、ヤギ肉は栄養素も非常にバランスの良いお肉です。
ミネラル分では鉄分が牛肉の約1.3倍、オメガ3脂肪酸では牛肉の5倍含まれており、成分値を見るとオメガ6脂肪酸とのバランスも良いことが分かります。
| 成分(100gあたり) | ヤギ肉 | 牛肉(もも赤身) |
| ナトリウム | 45mg | 48mg |
| カリウム | 310mg | 350mg |
| カルシウム | 7mg | 4mg |
| マグネシウム | 25mg | 24mg |
| リン | 170mg | 180mg |
| 鉄分 | 3.8mg | 2.8mg |
| オメガ3脂肪酸 | 0.05g | 0.01g |
| オメガ6脂肪酸 | 0.14g | 0.38g |
また、ヤギ肉は定番の鶏肉や牛肉、豚肉などに比べアレルギー反応が起きにくい「低アレルゲン」のお肉として知られています。
ただし、これはまだ多くの犬がヤギ肉のたんぱく質を摂取していない=アレルゲンの抗体を持っていないからと考えられており、100%アレルギー反応が起きないというものではありません。
しかし、同じく低アレルゲンのお肉として知られているラム肉や馬肉などと同様、主要なお肉に比べるとアレルギーリスクが少ないのは確かでしょう。
犬の健康にとって大切な高タンパク質の食材でありながら、脂質・カロリーが抑えられ、栄養バランスの良いヤギ肉は、多くのわんちゃんにとってオススメが出来るお肉と言えます。
ヤギミルクとはどんなもの?
ヤギミルクは、下記の表のように成分値的には牛乳に非常によく似ています。
| 成分(100gあたり) | ヤギミルク | 普通牛乳 |
| エネルギー | 57kcal | 61kcal |
| たんぱく質 | 3.1g | 3.3g |
| 脂質 | 3.6g | 3.8g |
| 炭水化物 | 4.5g | 4.8g |
では、わざわざヤギミルクを用意するのではなく、手軽に用意出来る牛乳をあげても良いのでは?と考える飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、犬は牛乳を飲むと下痢などになりやすく、それに伴い脱水症状などを引き起こす可能性があるため、犬に牛乳を与えるのはオススメできません。
一方でヤギミルクは、成分的には牛乳と同じように見えるものの、牛乳に比べ消化不良を起こしにくい特徴を持っており、犬に与えやすいミルクとなっています。
ヤギミルクをおすすめ出来る理由
脂肪球が小さい
ヤギミルクは牛乳に比べ脂肪球が小さく、約1/6の大きさであるということが分かっています。
そのため、犬にとっても消化がしやすく、消化不良を起こしにくいと考えられます。
アレルギーが起こりにくい
ヤギ肉同様、ヤギミルクは牛乳と異なり、アレルギーが起こりにくいとされています。
牛乳アレルギーの主な原因と考えられているタンパク質「aS1カゼイン」が、ヤギミルクにはほとんど含まれていません。
乳糖(ラクトース)について
よく「犬は乳糖(ラクトース)を分解する酵素が少なく、豊富な乳糖が含まれる牛乳を飲むとお腹を下してしまうため、乳糖が少ないヤギミルクがおすすめ」という情報を見かけますが、これは間違いとは言えないものの、正確ではありません。
確かに犬のからだは、ラクトースを分解することが苦手です。
しかし、ラクトースはヤギミルクにも含まれており、乳糖含有量は約4.1〜4.4%程。
乳糖含有量が約4.7〜5%の牛乳よりは確かに若干少ないものの、極めて低いかと言われると疑問が残ります。
ヤギミルクの場合、犬でも消化がしやすい理由としては先に述べた「脂肪球」が小さいことが主な理由として考えられるでしょう。
ヤギミルクを与える際の注意点
栄養素は牛乳と同じように豊富でありながら、犬でも消化不良を起こしにくく、アレルギーリスクも少ないといった良いところ尽くしのヤギミルク。
ですが、そんなヤギミルクも以下の病気を患っているわんちゃんには使用を控えた方が良いでしょう。
膵炎
膵炎の場合、脂肪分を多く摂取してしまうと症状が悪化する恐れがあります。
そのため、脂質の低いヤギ肉であれば問題ないかと思いますが、脂質の高いヤギミルクは避けた方が良いでしょう。
同じ「ヤギ」でも、ミルクになると脂質は約2倍の含有量となるため、注意が必要です。
慢性腎臓病
慢性腎臓病の場合、血液中のカリウムが高かったり、血圧が高かったりするので、ナトリウムやカリウムを多く摂取することはおすすめできません。
ヤギミルクには、お肉に近い量のナトリウムやカリウムが含まれているため、普段の食事に添加して使用すると、過剰に摂取してしまう可能性があります。
尿石症
特に「シュウ酸カルシウム結石」の尿石症があるわんちゃんは要注意です。
当然のことながら、乳成分であるヤギミルクには多くのカルシウムが含まれています。
摂取した分、尿中のカルシウム排泄が増加してしまい、シュウ酸カルシウム結石を悪化させてしまう恐れがあります。
| 成分(100gあたり) | ヤギ肉 | ヤギミルク |
| カルシウム | 7mg | 120mg |
| 脂質 | 1.5g | 3.6g |
ヤギ肉・ヤギミルクを使用したおやつを紹介
現在では、その豊富な栄養素と低アレルギー・低脂質・高タンパクといった特長から、多くのヤギ肉・ヤギミルクを使用したおやつが発売されています。
どんなものが販売されているのか、その一部をご紹介します。
ヤギ肉の缶詰やレトルトなどのウェットフード
栄養豊富なヤギ肉そのままを加工した、缶詰やレトルトパウチなどのウェットフード。
そのまま与えても良いですし、ドライフードのトッピングや手作り食に加えたりなど、日々のごはんへ手軽にヤギ肉を取り入れることが出来ます。
お肉そのものなので、栄養が損なわれず、かつ風味が良いため嗜好性が高い商品です。
少しだけ温めてあげると、香りも強くなるため、より食いつきが良くなるでしょう。
ヤギミルク
ヤギミルクは粉末にしたものや、そのまま液状のドリンクとして販売されています。
水分摂取を目的に、水に少量薄めて混ぜてあげるだけでも、通常の水より飲みっぷりが良くなりやすいです。
パウダー化された粉末タイプのものは、水に混ぜるだけでなく、ドライフードに振りかけて使用したりも出来るので使い勝手も便利です。
ただし、与えすぎは下痢の原因やカルシウムの過剰摂取となってしまうので、適量を与えることが重要です。
デンタルガム
ヤギミルクを使用したデンタルガムは、通常のガムよりも嗜好性が高い商品です。
匂いも良いので、通常のガムよりも夢中で噛んでくれるため、デンタルケアに最適です。
ただし、ヤギミルクを使用したガムに限らず、多くの犬用ガムは牛皮を使用しているため、アレルギーを持っているわんちゃんには注意が必要です。
また、丸飲み癖があるわんちゃんの場合は、誤飲防止のため、必ず飼い主さんが手で持ちながら噛ませてあげてください。
ゴートラング
ゴートラングは、ヤギの肺を乾燥させたおやつです。
肺は通常のお肉に比べ脂質がさらに低く抑えられ、内臓の中でも特に低カロリーな部位。
軽くてサクサクとした食感で、匂いも良いため、嗜好性抜群のおやつです。
基本的には手でも簡単に割れるくらいにはサクサクですが、たまに硬い部分があったり、先端が尖っている部分があったりもするので、歯が弱かったり丸飲み癖があるわんちゃんに与える際は、注意してあげてください。
その他、ヤギ肉やヤギミルクを使った商品はクッキーやボーロ、ミルクパンなど様々な商品が発売されています。
気になる商品があれば是非試してみてくださいね。
嗜好性の高いヤギ肉・ヤギミルクを上手く活用しよう
ヤギ肉は、低脂質・低アレルギーで非常に使いやすいお肉です。
嗜好性も高く、多くのわんちゃんが好んで食べてくれるでしょう。
ヘルシーな一面もありながら、高タンパクなので、いつものフードのトッピングや、おやつとして非常におすすめ出来るお肉だと思います。
ヤギミルクも嗜好性が高く便利ですが、与えすぎには注意が必要ですので、適量の使用に留めて活用してくださいね。
